中断・保定の破綻

リテーナーが壊れたときの対処|今夜の扱い・連絡先・作り直し費用の目安

リテーナーにひびが入っていた。ケースの中で割れていた。前歯の裏のワイヤーが、舌で触ると浮いている。リテーナーが壊れたときに知りたいのは、作り直しの値段より先に「今夜これを入れていいのか」だと思います。

先に結論を書きます。取り外し式は使用を止めて保管し、製作した医院へ連絡します。裏側の固定式は自分で外したり触ったりせず、接着した医院へ早めに連絡します。ただ、連絡しないまま外しっぱなしにするのも同じくらい避けたい選択です。歯は装置が入っていない間に動く可能性があるからです。

「割れた」「変形した」「ワイヤーが外れた」では、受診までの扱いが少しずつ違います。この記事では壊れ方ごとに、今夜の扱い、連絡先、してはいけないことを分けていきます。後半では、作った医院に連絡するときと他院に相談するときの伝え方、作り直しの分岐と費用の見方をまとめました。

まず、どう壊れたかを4つに分ける#

鏡と明るい照明の下で、装置と歯の両方を見ます。自分の装置がどれに近いかで、この先の読み方が変わります。

壊れ方 受診までの扱い 連絡先 しないこと
マウスピース型が割れた・ひび・欠け 使用を止め、破片ごと保管 製作した医院 接着剤で貼る、角を削る
熱で変形した・踏んで曲がった 使用を止め、そのまま保管 製作した医院 お湯で温めて形を戻す
プレート型のワイヤーが曲がった・折れた 使用を止め、破片ごと保管 製作した医院 ペンチなどで曲げ戻す
裏側の固定式ワイヤーが外れた・浮いた 触らずに早めに連絡 接着した医院 付け直す、切る、引っ張る

4つに共通するのは「装置を捨てない」ことです。壊れた装置そのものを、医院で見てもらうためです。

強い痛みや、歯ぐき・舌・頬の傷がある場合は、リテーナーが痛いときの見分け方にある「相談したい状態」の一覧が、そのまま使えます。

取り外し式が割れた・ひびが入った・欠けた#

マウスピース型でも、プレート型の樹脂部分でも、割れた装置の扱いは同じです。ひび・欠けなどの破損、ゆがみやワイヤーの曲がりなどの変形、または強い痛みがある場合は、受診まで使用を止めます。写真を撮るためにも再装着しません。

英国矯正歯科学会(BOS)の患者向け資料も、次の予約を待たずに知らせるよう勧めています。

「小さなひびなら使える?」への答え#

割れて二つになった装置を使おうとする人は少ないと思います。迷うのは、縁に小さなひびがある、角が少し欠けた、というくらいの壊れ方です。

小さなひびでも、ここでは「使ってよい」とは書きません。理由のひとつは、装置が入っているかどうかを本人の感覚では決めきれないことです。私の診療でも、患者さんが「しっかり入っている」と思っていても、こちらから見ると浮いていることが少なくありません。ひびの入った装置をこの先も使えるかどうかは、ひびの位置や装置の種類によるため、記事の一般論では決められません。

連絡するときは、ひびの位置と大きさを伝えます。受診までの間をどう過ごすかは、装置と歯並びを知っている担当医に決めてもらうのが筋です。

外したまま待ちすぎない#

使わないことと、放っておくことは別です。

リテーナーは歯が戻らないよう押さえておく装置なので、入っていない期間が長いほど、歯が動く余地が増えます。治療終了時のデータで作り直す場合は、その後の歯の移動によって合わないことがあります。

連絡しないまま日が過ぎると、そのあいだの歯の動き方によっては、選べる対応が狭まる可能性も出てきます。

熱で変形した・踏んで曲がった#

マウスピース型や樹脂の部分はプラスチックなので、温度変化に弱い素材です。プラスチック製の装置に熱湯は使えません。形を戻そうとして熱湯につける人は少ないと思いますが、消毒や洗浄のつもりで熱湯をかけて変形させてしまうことのほうが多いので、洗うときも熱湯は避けます。熱いお茶やコーヒーを付けたまま飲むのも同じです。私は、装着したまま飲むなら水だけにしてほしいとお伝えしています。

変形した装置は、お湯で柔らかくして元に戻そうとせず、そのまま保管します。踏んだ、落とした、ケースごと潰したという場合も同じです。途中で止まる、浮いたまま戻らない装置は、力ずくで押し込まず、製作した医院へ連絡します。

「割れてはいないけれど、急にきつい・浮く」という場合は、装置の変形なのか歯の側の変化なのかを、自分では分けられません。原因を決める前に撮る写真と確認の順番は、リテーナーが入らないときの確認手順にまとめています。装置を休んでいた心当たりがある場合は、リテーナーをサボってしまったときの判断手順も参考になります。

裏側の固定式ワイヤーが外れた・浮いた#

前歯の裏に接着するタイプは、取り外し式と事情が違います。自分で外せないぶん付け忘れはありませんが、外れても自分では気づきにくいのが弱点です。裏側なので鏡でも見えにくく、接着が一部だけ外れた状態でしばらく過ごしてしまうことがあります。

舌で前歯の裏をなぞったとき、ワイヤーが浮いている感じがしたら、それは外れかけです。端が引っかかる、歯との間に隙間がある、という形で気づく人もいます。どこまで外れているかを確かめるのは医院に任せます。

裏側に固定するタイプが外れた場合、そのままにすると外れた部分から歯が動きます。早めに接着した医院へ連絡してください。しばらく放っておいて、「なんとなく歯並びが変わった」と気づく人もいます。

受診までの間は、ワイヤーに手を加えないでください。

  • 指で押したり、引っ張ったりしない
  • 爪切りやペンチで飛び出した端を切らない
  • 市販の接着剤や歯科用ではない材料で付け直さない
  • 外れて取れたワイヤーがあれば、捨てずに保管する

ワイヤーの端が頬や舌に当たって傷になっている場合は、それも連絡のときに伝えます。取り外し式のリテーナーを夜だけ併用している方は、受診までそれを使ってよいかも、同じ電話で聞いておくと二度手間になりません。

作った医院に連絡するときに伝えること#

電話でも問い合わせフォームでも、次の5つがそろっていると話が早く進みます。

  1. いつ気づいたか。最後に問題なく使えた日はいつか
  2. どの装置か。マウスピース型、プレート型、裏側の固定式のどれか
  3. どう壊れたか。割れた、ひび、欠け、変形、ワイヤーの外れ・浮き・折れ
  4. 痛み、出血、口の中の傷があるか
  5. 壊れてからいままで、装置を使っていたかどうか

以前にも壊れたことがあれば、その回数も添えます。作り直しになったときは、完成の予定日と、それまでの過ごし方も、その場で聞いておきます。

写真があると、言葉だけより正確に伝わります。たとえば、装置の表と裏を明るい場所で1枚ずつ、固定式なら口を開けて前歯の裏側を1枚、というのが撮り方の例です。どんな写真が要るかは、連絡のときに医院へ聞いておきます。

ここは相談サービスとしては不利な話ですが、書いておきます。装置が壊れたという段階なら、まず連絡すべきなのは装置を作った医院で、このサイトではありません。作った医院なら、治療前後の記録と照らし合わせて、いまの歯並びを見られます。マウスピース矯正だった方は、治療終了時のデータが医院に残っていれば、来院せずに再製作して郵送してもらえる場合があります。

作った医院に行けないとき|他院への伝え方#

引っ越した、閉院した、何年も通っていない。こうした事情で、作った医院へ連絡できない人もいると思います。

保定装置だけを他院で作ることは、断られるとは限りません。ただし他院には治療前後の記録がないため、いまの歯並びが「このまま保定してよい状態か」を診るところから始まります。いまの歯並びに合わせて作る保定装置は、その状態を維持する目的です。

マウスピース矯正だった方は、他院を探す前に、治療した医院へ連絡がつくかを試します。連絡できる場合は、治療データが残っているか、それを使って作り直せるかを確認します。

他院に問い合わせるときは、最初の電話で次のように伝えると、受けてもらえるかどうかが早く分かります。

〇年ごろに別の医院で矯正治療を終え、いまは保定中です。裏側の固定式(またはマウスピース型・プレート型)のリテーナーが〇日に壊れました。治療した医院には(転居のため・閉院のため)通えません。保定装置だけの相談と作り直しをお願いできるか、初回にかかる費用と、持っていくものを教えてください。

持っていくものは、壊れた装置と破片、手元にあれば治療の契約書・治療計画書、治療前後の写真やデータの控えです。資料がなくても相談はできますが、何がないかを先に伝えておくと、医院が初回にすることを決めやすくなります。

記録がない、説明を聞いても判断がつかないという場合は、手元の資料をそろえて矯正のセカンドオピニオンを受ける手順に進む方法もあります。

医院で決まること|作り直しの分岐#

医院では、壊れた装置と、いまの歯並びの両方を確認します。固定式が外れた場合に、付け直すか作り直すかを決めるのもこの段階です。取り外し式をどう扱うかも、装置を見た医院が決めます。

作り直した装置が入るかどうかは、本人の感覚ではなく医院で確認します。入らず、装着を休んだことによる後戻りが原因と確認された場合、選択肢は大きく3つに分かれます。

  • 装置が完全に入り、使用できると判断された場合は、装着を続ける
  • 現在の歯並びを維持したい場合は、型取りやスキャンをして作り直す
  • 治療終了時の歯並びへ戻したい場合は、部分矯正または再治療を検討する

2つ目と3つ目のどちらに進むかは、本人の希望で決まります。3つ目に進むと、作り直しの費用だけでは収まりません。部分矯正や再治療の費用の目安は、矯正のやり直し費用|修正の規模別の内訳にまとめています。壊れてから日が浅いうちに連絡したほうがよい理由は、ここにあります。後戻りが保定だけの問題か、別の確認が必要かは、矯正の後戻り|リテーナーで治るか、再矯正が必要かの見分け方で整理しています。

作り直しの費用の目安と、見積もりの見方#

費用について、私が目安としてお伝えしているのは、取り外し式のリテーナーの作り直しで、状況に応じて3万〜10万円です。固定式の付け直しの費用は、この目安に含めていません。

取り外し式のリテーナーの作り直しは、基本的に自由診療です。顎変形症などで保険の矯正治療を受けた場合は保険診療になることがあります。自由診療の場合は全額自己負担です。金額は医療機関、装置の種類、片顎か上下両方かによって変わります。上の金額は目安で、どの医院でもこの額になるという意味ではありません。固定式の付け直しの費用は、接着した医院で聞いておきます。

医院ごとに金額が違うのは前提として、見積もりを比べるときは、総額に何が含まれているかをそろえます。見積もりで聞いておきたいのは次の4つです。

  • 診察料や再診料が別にかかるか
  • 型取り・スキャンの費用が含まれるか
  • 片顎の金額か、上下両方の金額か
  • 完成後の調整や、合わなかったときの対応が含まれるか

矯正治療の契約に保定装置の費用が含まれている場合でも、壊した・なくしたことによる作り直しが追加料金になるかどうかは、契約の内容によります。契約書か治療計画書に「保定装置代」「保定観察料」の記載があるかを見ておくと、医院での説明と照らし合わせられます。保定期間中の通院にかかる調整料が契約に含まれるかどうかも、医院ごとに違います。金額が動く要因と装置の種類は、保定装置(リテーナー)の費用と作り直しの目安で詳しく説明しています。

やってはいけないこと#

  • 市販の接着剤で割れた部分を貼る
  • 熱湯などで温めて形を戻す
  • 欠けた角や当たる縁を自分で削る
  • プレート型や固定式のワイヤーを曲げる、切る、付け直す
  • 浮いたまま戻らない装置を、噛んだり指で押したりして押し込む
  • 壊れた装置や外れた破片を捨てる
  • 「小さなひびだから」と自己判断で使い続け、連絡もしない
  • 連絡しないまま、装置を外した状態で何週間も過ごす

最後の2つは方向が逆に見えますが、どちらも「医院に知らせないまま自分で決める」点で同じです。

次に壊さないために#

壊れた理由が思い当たる場合は、作り直したあとの扱いを変えます。

  • 外したら、ティッシュに包まずケースに入れる。包んだまま捨ててしまう、置いた場所で踏む、という壊れ方を防げます
  • 洗うときも熱湯は使わない。食器洗い機や車内など、熱がこもる場所にも置かない
  • 装着したまま飲むのは水だけにする

思い当たる理由がないのに同じところが繰り返し割れる場合は、その回数を伝えて、原因を医院で見てもらいます。装置の種類や作り方を変えるかどうかは、そこで相談することになります。

よくある質問#

リテーナーが割れたとき、応急処置はありますか?#

家庭でできる修理はありません。外して、破片と一緒にケースで保管し、製作した医院へ連絡します。接着剤や熱による処置はしないでください。

裏側の固定式ワイヤーが外れたらどうしますか?#

付け直したり切ったりせず、早めに接着した医院へ連絡します。浮いている感じがする段階で連絡して構いません。

壊れたまま放置すると後戻りしますか?#

装置を使えない期間が長いほど、歯が動く可能性は高くなります。作り直しを待つ間の扱いは、連絡したときに担当医へ確認してください。

他院で作り直してもらえますか?#

作れる場合があります。他院では、いまの歯並びが保定してよい状態かを診るところから始まります。マウスピース矯正だった方は、治療した医院へ連絡できる場合、先にデータの有無を確認すると話が早く進みます。

作り直しの費用はいくらですか?#

取り外し式の作り直しで、監修医の目安は3万〜10万円です。基本的に自由診療です。顎変形症などで保険の矯正治療を受けた場合は保険診療になることがあります。自由診療の場合は全額自己負担で、金額は医療機関や装置ごとに違います。

作り直しができるまで、どのくらいかかりますか?#

装置の種類や医院の体制で変わるため、ここでは日数を示しません。連絡したときに、完成の予定日とそれまでの過ごし方を確認してください。

まとめ#

  • 取り外し式は使用を止め、捨てずに保管して、製作した医院へ連絡する
  • 固定式は自分で外したり触ったりせず、早めに接着した医院へ連絡する
  • 接着剤、熱、削る、曲げる、切る、押し込むといった自己修理はしない
  • 外しっぱなしで連絡しないのも避ける。日が経つほど対応の選択肢が減ることがある
  • 作った医院に行けないときは、装置の種類・壊れた日・通えない理由・資料の有無を最初の電話で伝える
  • 取り外し式の作り直しは3万〜10万円が目安(基本的に自由診療。顎変形症などで保険の矯正治療を受けた場合は保険診療になることがあります。医療機関ごとに異なる)。見積もりは含まれる項目をそろえて比べる

壊れたことに気づいたら、まずは作った医院への連絡から始めます。

作った医院へ連絡できない、説明を聞いても次に何をすればよいか分からない、という場合は、状況を整理するところから手伝えます。

状況を送って相談する(編集部が次の手順を整理します。医院の紹介は約束しません)

参考資料(英語)

本記事は監修医・尾上智洋の回答と一般向け資料をもとにしています。取り外し式のリテーナーの作り直しは基本的に自由診療です。顎変形症などで保険の矯正治療を受けた場合は保険診療になることがあります。自由診療の場合は全額自己負担で、費用は医療機関ごとに異なります。固定式の付け直し、部分矯正・再治療の費用と保険適用の可否は、医院での確認が必要です。装着時の痛みや違和感、粘膜の傷、歯への偏った力、後戻り、想定した結果が得られない可能性などのリスクがあります。部分矯正や再治療に進む場合は、歯根吸収、歯肉退縮、虫歯・歯周病リスクの上昇、治療期間の延長などのリスクもあります。個別の判断は、装置を製作した歯科医院または診察した歯科医師の指示を優先してください。

この記事に関するよくある質問

リテーナーが割れたとき、応急処置はありますか?

家庭でできる修理はありません。割れた装置は外して、破片と一緒にケースで保管し、製作した医院へ連絡します。接着剤で貼る、熱で形を戻す、といった処置はしないでください。

裏側のワイヤー(固定式リテーナー)が外れたらどうすればいいですか?

自分で付け直したり、切ったり、引っ張ったりせず、早めに接着した医院へ連絡します。そのままにすると、外れた部分から歯が動きます。舌で触れて浮いている感じがする段階でも連絡してください。

壊れたリテーナーを放置すると後戻りしますか?

装置を使えない期間が長くなるほど、歯が動く可能性は高くなります。作り直しを待つ間の扱いは、連絡したときに担当医へ確認してください。時間が経つほど、対応の選択肢が減ることがあります。

リテーナーが壊れたら、他院で作り直してもらえますか?

作れる場合があります。ただし他院は、いまの歯並びが保定してよい状態かを診るところから始めます。マウスピース矯正だった方は、治療した医院へ連絡できる場合、先に治療データが残っているかを確認すると話が早く進みます。

リテーナーの作り直し費用はいくらですか?

監修医が目安としてお伝えしているのは、取り外し式のリテーナーの作り直しで3万〜10万円です(固定式の付け直しは含みません)。基本的に自由診療です。顎変形症などで保険の矯正治療を受けた場合は保険診療になることがあります。自由診療の場合は全額自己負担で、金額は医療機関や装置の種類によって異なります。契約に保定装置の費用が含まれているかも確認してください。

作り直したリテーナーができるまで、どのくらいかかりますか?

装置の種類や医院の体制で変わるため、この記事では日数を示しません。連絡したときに、完成の予定日と、それまでの過ごし方を一緒に確認してください。

この記事の位置づけ:一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。 症状の判断や治療の選択は、必ず歯科医師の診察を受けたうえで行ってください。 内容は2026年10月17日時点の情報です。

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