保定装置(リテーナー)の費用はいくらか|作り直し・紛失・他院で作る場合
矯正の装置が外れたあとに渡される保定装置。その費用がいくらなのかは、治療前の説明で一度は聞いているはずですが、覚えていない方がほとんどです。
実際に金額を知りたくなるのは、なくしたとき、壊れたとき、そして久しぶりに入れたら入らなかったときです。つまり、最初の説明から何年か経ったあとです。
この記事では費用から先に書きます。装置の種類や仕組みは、そのあとに必要な分だけ触れます。
費用の目安#
作り直しで3万〜10万円、というのが当サイトの監修医の回答です。
「¥55000円くらいかな!」 — 尾上 智洋(矯正専門歯科医師)
矯正治療は自由診療です。全額自己負担で、金額は医療機関ごとに異なります。上の数字は目安であって、どの医院でもこの額になるという意味ではありません。
金額が動く要因は、主に次の3つです。
| 要因 | 費用への影響 |
|---|---|
| 片顎か、上下両方か | 両方なら1.5〜2倍前後 |
| 装置の種類 | マウスピース型より、ワイヤーを使うプレート型のほうが高い傾向 |
| 型取りが要るか | 治療データが医院に残っていれば、型取りなしで作れる場合がある |
3つ目は費用と期間の両方に効くので、あとで詳しく書きます。
矯正治療の契約に保定装置代が含まれている場合、最初の1個は追加費用なしで渡されるのが一般的です。費用が発生するのは、なくした・壊した・合わなくなったときの2個目からです。契約書か治療計画書に「保定装置代」「保定観察料」の記載があるか、一度確認してみてください。
保定期間中の通院にかかる調整料も、契約に含まれる場合と別途の場合があります。ここも医院ごとに違います。
治療した医院に行けない場合#
この記事を読んでいる方の多くは、ここが本題だと思います。
引っ越した。閉院した。何年もサボっていて今さら顔を出しづらい。理由が何であれ、治療した医院に行かない前提で考える必要があるとき、選択肢は次のようになります。
他院でも作れます。ただし順番が違います#
保定装置だけを他院で作ることは、断られるとは限りません。相談を受けている医院はあります。
ただし、他院はまず「いまの歯並びが保定してよい状態か」を見るところから始めます。ここが、元の医院で作り直すのとの決定的な違いです。
元の医院なら、治療前後の記録があるので「この状態を維持すればよい」と分かっています。他院にはそれがありません。動いてしまった原因が保定の不足なのか治療計画そのものなのかは、矯正の後戻り|リテーナーで治るか、再矯正が必要かの見分け方で切り分けの手順を書いています。目の前の歯並びが、治療の完成形なのか、すでに動いたあとなのかを判断できません。
すでに動いてしまっている場合、保定装置を作っても元には戻りません。 動いた位置のまま固定するだけです。それでよければ作り直しで済み、元に戻したいなら別の治療が必要になります。
マウスピース矯正だった方は、電話が先です#
インビザラインなどのマウスピース矯正で治療した場合、治療に使った歯型のデータが医院や技工所に残っていることがあります。
データが残っていれば、型取りをせずに同じ形の装置を作れる場合があります。費用も期間も変わります。
行きづらい医院でも、電話で「データが残っているか」を聞くだけなら数分です。行かずに済ませたい気持ちは分かりますが、ここは順番として先に確認する価値があります。データがないと分かってから、他院を探しても遅くありません。
装置の種類#
費用と使い勝手に直結する部分だけ書きます。
| 種類 | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| マウスピース型(クリアリテーナー) | 透明。目立たない。取り外せる | 見た目を気にする方。歯ぎしりがある方 |
| プレート型(ホーレー、ベッグ) | 前歯側にワイヤー。調整できる | 微調整が必要な場合 |
| 固定式(フィックス) | 前歯の裏側にワイヤーを接着。外せない | 外し忘れが心配な方 |
固定式には、外れたことに自分で気づきにくいという弱点があります。裏側なので見えません。接着が外れた部分から歯が動き始め、しばらくしてから「なんとなく歯並びが変わった」と気づくことになります。
舌で前歯の裏をなぞったとき、ワイヤーが浮いている感じがしたら、それは外れかけです。
いつまで着けるのか#
装置を外した直後は、食事以外の時間ずっと。1年ほど経つと就寝時のみに移行する。これが当サイトの監修医の方針です。
なぜ最初の1年が厳しいのかというと、装置を外した直後が最も歯が戻りやすい時期だからです。監修医の説明では、骨が作り変わって成熟するまでにおよそ3か月かかり、外した直後は歯を引っ張っていた側の骨がまだ置き換わっていません。だから最も戻りやすい。
「◯年で終わり」という一律の答えはありません。動かした量、もともとの歯並び、噛み合わせの安定度によって、必要な期間は変わります。渡されたときの指示が最優先です。
一生つけ続けなければならない、というものではありません。ただし監修医は、不安があるなら一生つけ続けてもよく、そこは患者さんに委ねる場合もあると言います。
例外があります。骨格のずれが大きく、本来は外科手術を伴う矯正が望ましい症例で、手術を選ばずに歯の移動だけで対応した場合(カモフラージュ矯正といいます)は、保定期間を1〜2年ではなく、半永久に切り替えます。 舌で前歯を押す癖や口呼吸が残っている場合も同様で、癖が消えるまでが保定期間になります。
いずれにせよ、やめる判断は自己判断ではなく医師と決めるものです。
「久しぶりに入れたらきつい」は、やめる理由になりません#
保定装置を久しぶりに入れて、きついと感じた。多くの方がここで外してしまいます。
きついのは、歯が動き始めている証拠です。 装置は元の位置に戻そうとして押しています。痛いのは効いているからで、外す理由ではありません。
判断は「入るかどうか」で分かれます。
- 問題なく入る → そのまま装着を再開してください。追加費用はかかりません
- きついが、最後まで入る → 装着は続けたうえで、完全に入っているかを一度診てもらってください
- 入らない・浮いて閉まらない → 無理に押し込まないでください。作り直しか、それ以上の対応が必要です
2つ目に注意が要ります。監修医によれば、患者本人が「完全に入っている」と思っていても、 専門家が見ると浮いていることが実状として多く、その状態で自己判断のまま使い続けると悪化します。 入ったかどうかは、自分では判定しきれません。
詳しい判断の手順はリテーナーをサボってしまったときにまとめています。
やってはいけないこと#
- 接着剤で自分で修理する ── 口に入れるものです。破片は捨てずに持って受診を
- 熱湯・ぬるま湯で洗う ── プラスチックなので温度変化に弱く、変形します。流水で洗ってください
- つけたままお茶やコーヒーを飲む ── 着色し、虫歯のリスクも上がります。つけたまま飲んでよいのは水だけです。監修医によれば、食事のときは外すのに飲み物では外さない方が意外と多いそうです
- ティッシュに包んで置く ── 捨てられます。紛失の原因として最も多い形です
- 入らないまま放置する ── 時間が経つほど戻る量が増え、対応の選択肢が減ります
今日できること#
- 契約書か治療計画書を探す(5分)。保定装置代が含まれているかを見る
- マウスピース矯正だった方は、治療した医院に電話する(電話1本)。データが残っているかを聞くだけ
- 装置が手元にあるなら、洗って入れてみる(1分)。入るかどうかで、この先が決まります
まとめ#
- 保定装置の作り直しは3万〜10万円が目安。自由診療で、金額は医療機関ごとに異なる
- 契約に保定装置代が含まれていれば、最初の1個は追加費用なしのことが多い
- 治療した医院に行けなくても、他院で作れる場合がある。ただし「保定してよい状態か」の判断が先
- マウスピース矯正だった方は、型取りより先に電話でデータの有無を確認する
- きついのは効いている証拠。判断は日数ではなく「入るかどうか」
この記事の費用はすべて自由診療の目安で、全額自己負担です。保定装置の作り直しや再治療には、装着時の痛みや違和感、後戻りの再発、想定した結果が得られない可能性などのリスクがあります。実際の判断は、歯科医師による診察を受けたうえで行ってください。
この記事に関するよくある質問
保定装置の費用はいくらですか?
作り直しで3万〜10万円が目安です。自由診療のため全額自己負担で、金額は医療機関ごとに異なります。矯正治療の契約に保定装置代が含まれている場合、最初の1個は追加費用なしで渡されることが多く、紛失・破損による作り直しから費用が発生します。
保定装置は1日何時間つけますか?
装置を外した直後は食事以外の時間ずっと、というのが一般的な指示です。1年ほど経つと就寝時のみに移行することが多くなります。ただし装着時間は、動かした量や後戻りしやすさによって医師ごとに判断が変わります。渡されたときの指示が優先です。
保定装置が取れた・外れたときはどうすればいいですか?
裏側に固定するタイプが外れた場合、そのままにすると外れた部分から歯が動きます。早めに歯科医院へ連絡してください。取り外し式が壊れた場合は、破片を捨てずに持って受診を。自分で接着剤を使うのは避けたほうが無難です。洗浄は流水で行ってください。
治療した医院が遠い・閉院した場合、他院で保定装置だけ作れますか?
作れる場合があります。ただし他院は、いまの歯並びが「保定してよい状態か」を判断するところから始めます。すでに動いてしまっている場合、保定装置を作るだけでは元に戻りません。まず現状を診てもらうのが先になります。
保定装置とリテーナーは違うものですか?
同じものです。「保定装置」は日本語の呼び方、「リテーナー」は英語(retainer)由来の呼び方で、歯科医院によってどちらを使うかが異なります。
この記事の位置づけ:一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。 症状の判断や治療の選択は、必ず歯科医師の診察を受けたうえで行ってください。 内容は2026年9月13日時点の情報です。
他院で受けた矯正が、このままでいいのか分からない方へ
担当医に聞いても「順調です」としか返ってこない。やり直せるのか、費用はいくらか。矯正歯科医が内容を確認して、次に取るべき手順をお返しします。相談は無料です。
矯正歯科医に相談する(無料)あわせて読みたい
- 中断・保定の破綻
リテーナーをサボってしまった|まず見るのは「日数」ではなく「入るかどうか」
リテーナーをサボってしまったとき、日数より先に確かめるべきは「いま装置が入るかどうか」です。きついのに装着を続けてよい理由と、作り直し(3万〜10万円が目安)で済むか再矯正になるかの分かれ目を、矯正歯科医の回答をもとに整理します。
- 症状別の失敗
矯正の後戻り|リテーナーで治るか、再矯正が必要かの見分け方
装置を外したあとに歯並びが戻る「後戻り」。リテーナー不足によるものと、噛み合わせが安定していないために戻るべくして戻るものは対処が異なります。原因の切り分け方と修正の費用を矯正歯科医監修で解説します。